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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第130号

2017年11月1日発行

〜楽しく、幸せな人生を作ろうと努めた人〜

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

私たちの身の回りには、ダウン症や自閉症など知的な障害と闘っている人や病院や緩和ケア病棟や介護施設などを利用せざるをえなくなった多くの人達がいらっしゃいます。私たちは往々にしてそれらをただ見るだけで過ごしてしまいます。

ところが、この8月天に召された東野洋子さんは違います。彼女は、1982年に、神戸市で高等養護学院の在校生や音楽好きの若者6人と友人2人で「楽団あぶあぶあ」を結成しました。楽団員は、ダウン症や自閉傾向などのある人たちで、一曲仕上げるのに、1年から3年もの長い時間がかかりました。しかし、その時間のかかる間にお互いの友情や思いやりの気持ちが育まれました。この楽団には、他にはない「人生は友情」というメッセージが込められることになりました。

楽団は結成以来、この努力に感動された実に多くの人達のご支援もあって、年8回の定期演奏会やチャリティコンサートなど、200回をこえる演奏も行なって、延べ15万人の人々と楽しい時間を分かち合うことができました。

10年後の1992年には、20名のメンバーで「ミュージカルチームLOVE」を結成し、作曲家水本誠さんのご協力もあって、15場20曲まで演奏できるようになり、ニューヨークやバルセロナなどでの海外演奏まで行い、国際的にも注目されてきました。

洋子さんは、2005年に不幸にして癌を患うことになりました。しかしそれからも「あぶあぶあ」のために努力を重ねられましたが、それ以来「見る人が幸せになる絵を描きたい」と念ずるようにもなり、「世の平安」と「人々の幸せ」を願う実に沢山の絵を描き続けられました。

私は、彼女の活動を強力にサポートしておられたロータリー・クラブの米谷収さんや今井鎮雄さんなどからのご紹介で、彼女を存知あげるようになりました。彼女は私が勤務していました神戸大学の卒業生であることもあって、それ以来敬愛の念をもって応援をしてきました。おかげで、彼女からも多くのお手紙の他にCDや著書なども頂き、私は2010年には、彼女を兵庫県社会賞候補者にご推薦し、実際にその受賞者になって頂きました。

人間は、素晴らしい人に会うと、励まされ、自分も少しでもこの人に近づきたいと思うものです。彼女が、日野原重明さんや竹下景子さんなどの力強い応援をえられたのは、それを象徴しています。残念乍ら私の知るかぎり県や市には勿論、彼女の母校である神戸大学にも彼女のような人を記念する場所は設けられてはいません。しかし、これから素晴らしい人生を生きようと思っている若い人々の中にも、きっと東野洋子さんの生きざまを知ることが出来れば、日野原さんのように、この楽団員の皆さんと一緒に踊るだけでなく、自らもこうした志を生かせる人間になろうと思う人が出てくるだろうと確信します。東野洋子さん、安らかにお休み下さい。