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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第129号

2017年10月2日発行

〜ハリケーン・ハービーとハリケーン・イルマの教訓〜

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

ヒューストンを襲ったハリケーン・ハービーと、そのあとカリブ海域を経てフロリダ州を襲ったハリケーン・イルマは、わが国では、それ程大きく取り上げられてはいません。しかし、欧米では違います。ハリケーンは新聞で連日大々的に報道されているだけでなく、例えば、ロンドン「エコノミスト」誌の巻頭論文や別の特集でも詳しく論じられています。

その原因は、第一に何といっても、アメリカ第4の大都市ヒューストンを襲うことになったハリケーン・ハービーと、カリブ海域諸島を席巻し、フロリダだけでも650万人の避難勧告が出たハリケーン・イルマの被害が巨大だったことによります。それだけではありません。第二に、アメリカを襲ったハリケーン水害だけでなく、こうした水害は、世界各国とくにわが国も含む東南アジア諸国でも発生し、いまや世界的な現象となっていることによります。第三に、より重要なことは、こうした洪水が、科学的に決定的になっていない面があるとしても、地球温暖化の結果である海水温度と海面の上昇のために、今後益々巨大化してくることが認識されるようになったことによります。

しかも、今回のハリケーン、とくに、イルマの場合は、私たちに大きな警告を与えることになりました。同じハリケーンでも、被災地域によって被災の大きさと復興可能性との格差が発生し、目立つようになったということがそれです。もともと、フロリダ湿地帯はパラダイスには最適な場所だという間違った考えで建設されたところであります。そこには、今迄も裕福な人達が競って安住しようとすることになり、その勢いは、外国人にも及んできました。それもあって、最初からハリケーンの被害にも耐えられる工夫もされ、今回のような被災のあとでも温暖化にも拘らず、すぐさま建築物の再建が始まっています。ところがカリブ海の島々では、壊滅的な被災をうけ、ゼロからの再建を考えなければならないとされ、これらの島々の代表は、国連に対して連帯して復興基金の建設を要請し始めています。そう言えば、エコノミスト誌でも取り上げているように、同じ洪水でも、先進国での場合と違って何十万人という死傷者が発生し、そこからの復興はカリブ海諸島のそれのように極めて困難になっています。

そう言えば、最近わが国を襲う台風でも、今迄と違って、集中豪雨が偏り、しかも降雨量も以前には想像できない大きさに変わってきました。そのため、わが国を襲う台風でも、そのための対応が十分なところと、そうでないところで大変な被災度と復興力の違いをもたらすようになっていることに配慮しなければならなくなりました。今回アメリカを襲った2つのハリケーンは、私たちにも重大な教訓を投げかけているといわねばなりません。