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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第128号

2017年9月1日発行

〜日本の官僚制度と内閣とのあり方が問われる時〜

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

関西2府4県の自治体、商工会議所、経済同友会、国公私立大学等々が協力して創設した関西サイエンス・フォーラムという全国でも珍しい組織があります。この組織設立のねらいは、東京一極集中にならないような関西経済の発展を図るために、自然科学だけではなく、社会・人文科学を含む総合的なイノベーションを図ろうとするものでした。そのために、関西2府4県でそれぞれ特色のあるサイエンス・フォーラムを開いて経済・社会発展の契機を見出そうとするものでした。そのために、同フォーラムは、色々な活動を行ってきましたが、その1つに中央官庁から局長さんクラスの人を招いて、中央政府の地方振興をも含む多様なイノベーション振興策について報告を聞き、討議するという試みがありました。

ところが、民主党政権が成立した時、ご承知のようにこういう試みは認められなくなりました。官僚指導的な政策体系を否定し、政治指導型の運営にするというので、中央政府に副大臣や政務官などがおかれ、こういう人が、関西サイエンス・フォーラムで講演するならよいが、従来のように担当局長や審議官などがスピーチすることは認めないことになったのです。

ところが、失礼ながらこんな方々に来て頂いても、本当に具体的な政策手法についてのお話が聞けないというので、この企ては、爾来一時的であれ中止されることになってしまいました。ところがこのことと無関係でない極めて重要なことが加計学園や稲田防衛大臣問題などと関連して政治問題化することになりました。

すなわち、本来どこの国でも統制、決定の主体である国民を代表する政治家が、法律・人員・運用の全てを理解してその運営に当たらなければなりません。ところが、米国などとは違って、わが国では、整備された官僚制度が確立されており、法律の運用などについての専門的能力は官僚機構の中に累積されていて政治家にはそれを凌駕する能力のある人が少ない形になってきました。その官僚制度を、政治家が法律・人員の運用についての十分な理解力を持たないままで上から権力的に運用しようとすると、例えば本来構造改革問題であるものでも官僚制度と内閣との対立のような形になってしまいます。そのため、問題が発生するとそれを惹起した個々人の行為の問題にされがちです。ところで、どこの国でも、官僚制度と政治家との関係は歴史的に独自な関係の中で確立され、それぞれ特有の問題を持ち、その改善にも追われています。

わが国でも、この機会にその在り方について制度的に再検討をし、どこの国にもないような独自で理想的な官僚制度と内閣、あるいは、政党政治家との関係を見出して行くことが望まれているといわねばなりません。