「理事長 新野 幸次郎 巻頭言」一覧へ

神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第124号

2017年5月1日発行

〜災害多発時代のシンクタンク〜

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

この4月25日、兵庫県公館で「ひょうご震災記念21世紀研究機構」の「研究戦略センター」発足を記念するシンポジウムが開催されました。同研究機構の理事長は東日本大震災復興構想会議議長だった五百旗頭真氏、議長代理の御厨貴氏と、委員として大きな役割を果たされた河田恵昭氏はともに同機構の副理事長である。当日のシンポジウムの司会は五百旗頭理事長、基調講演は御厨氏、パネリストはこの2人の副理事長に加えて室崎益輝同機構顧問、それに「こころのケアセンター」の加藤寛氏と常葉大学の重川希志依氏でありました。従って、現在求められるトップクラスの討論者を集めた震災復興問題のシンポジウムといってよいものでした。

御厨氏は、基調講演で、今日わが国で最大の課題の1つになっている「安全・安心」は、敗戦後の高度成長の中で生まれた「公害」問題を契機として課題視されるようになりましたが、言葉の厳密な意味では、戦後50年目に勃発した阪神・淡路大震災を契機に本格的に認識されるようになったとされました。ところが、その後相次いで起こった中越地震、東日本大震災、さらには、昨年の熊本地震などは、皆それぞれ独特な構造と展開をみせ、固有の課題を残してきました。

しかも、この30年以内には、かつてなく大規模な南海トラフ大震災の勃発が告げられています。地震以外にも、気象変化に伴う洪水とか、山崩れなどの災害も予想されています。

そうだとしたら、阪神・淡路大震災を契機にして設置された本格的なシンクタンクである「ひょうご震災記念21世紀研究機構」は、発生する天災が勃発してから後追い的に分析するのでなく、今迄のありとあらゆる災害復興で足りなかったこと、比較的うまく処理できたことなどを比較研究し、その結果をこれからのわが国の災害対応の実践知として集大成してゆかねばならないと主張されました。

それに関連して、シンポに参加された皆さんから夫々有益な発言がありました。中でも河田氏が、それだけ当研究機構に対する期待は大きくなっても、実は、「人と防災未来センター」はいわゆるマッチング・ファンド形式(すなわち、兵庫県が準備できる基金と同額だけ国が支出するという方式)の運営で、このままでは災害多発時代の要請に応えられないと主張され注目を集めました。

そう言えば、私は貝原俊民知事などとご一緒に国土庁に設けられた「阪神・淡路大震災復興記念事業検討委員会」に参加し、その座長を務めました。その時、貝原さんは、この種の記念事業は財政困難な被災県に依存することなく、全額国の予算措置で保障されるべきだと何回も強く主張されました。しかし、いわゆる後藤田ドクトリン(東日本や熊本のときとは違って、国はかつて国の行ったインフラについての復旧は国でやるが、それ以外の復旧・復興は被災地が自ら負担すべきだという主張)もあって、「人と防災未来センター」などの復興記念事業は、やっとマッチング・ファンド方式になりました。

あれから22年、兵庫県と神戸市は、自ら復興基金をつくり、また厖大な復興費用を負担して、今迄、全国各地で発生した災害シンクタンクとしても大きく貢献してきました。機構が、災害多発時代に備える新しい「研究戦略センター」を発足させるようになった今日、そのセンターの国家的重要性に鑑み、あらためてこのセンターを全面的に国家的事業とするよう工夫すべきであると主張してはどうかと思った次第です。