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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第123号

2017年4月3日発行

〜「べっぴんさん」とマーケティング〜

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

20%を超える高い視聴率をもっているNHKの「べっぴんさん」は、明日はどうなるのだろうと人々の胸をわくわくさせるような演劇とは必ずしも言えないかもしれません。しかし、考えてみるとこの劇はグローバリゼーションの中で、長期停滞に落ち込んだ企業や産業がどうしたら存続でき、そこで働く人々や家族がどうすればよいかについての一つの示唆を与えている内容になっていると言えないことはありません。すなわち、可愛い赤ちゃんや幼児たちに喜んでもらえる肌着や洋服を作れたらということで立ち上がった4人の女性たちが、社会の変化の中で、必死に相談しながら生き伸びてゆくお話は、企業経営にとって大切なマーケティングの在り方についての一つのモデルを提示するものになっています。

ご承知のように、企業が提供する商品やサービスが顧客の要請に応えられるものになるためには、マーケティングが必要です。マーケティングの第一は、提供する商品やサービスが良質のものでなければなりません。第二に、それが良質であるだけでなく、消費者の要請に応えるものでなければなりません。第三に、提供する商品やサービスだけに限らず、それを提供する企業が社会の他の要請にも応える活動をしていることも必要です。しかし、ITの発達や経済・社会のグローバル化した状態で、長期停滞が生まれているような時には、以上三つの条件を満たすだけでは企業は生き残れません。提供する商品やサービスの技術的な革新だけでなく、消費者もまだ気付いていないような商品やサービスの使い方、受けとめ方についてのイノベーションまで想いつかなければなりません。

ところが、これは、大変難しいことで、一人で考えるだけでは想いつかないことも多いのです。こうした新しい着想を出すためにはすべての職員が真剣にお互いに討議をしながら、新しい着想を見い出さなければなりません。あの連続ドラマ「べっぴんさん」は、その状態を生々しく描き出しています。

少し前に、私がこの巻頭言で紹介しました「ネスレ日本」の高岡浩三社長は、「マーケティングのすすめ」という本の中で、あの会社で大きな効果をあげた「イノベーション・アワード」(何人かで組んで新しい着想を生み出し、その実効をあげた人たちに贈られる賞与)のことも取り上げておられます。「べっぴんさん」の女性たち、それと協働しておられるすべての人々は、事実上この役割を果たしておられます。

こうして考えると、「ネスレ日本」も神戸にありますが、「べっぴんさん」の「ファミリア」も神戸で生まれました。神戸は今こそ、長期停滞に悩む現代の企業・産業の再生を図る拠点になっていることを誇りにして発展して行かなければなりません。