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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第121号

2017年2月1日発行

〜「災害教訓セミナー」と「都市政策セミナー」について〜

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

今年度からわたしどもの「神戸都市問題研究所」では、「災害教訓セミナー」と「都市政策セミナー」を始めました。前者は、阪神・淡路大震災以来、弊研究所が主要テーマの一つにしてきました数多くの震災研究の中で得たいくつかの重要な教訓をとりあげ、皆さんとご一緒に討議しようとするものです。それに対して後者は、弊研究所の機関誌「都市政策」でとりあげた諸問題の中からとくに時宜に適したテーマについてその執筆者のご講演を聞き、質疑応答を通じて市政の改善と市民生活の向上に寄与できればという趣旨で設けたものです。

考えてみるとこういう試みは、前者はともかく弊研究所の開設と同時に行なうべきものであり、遅すぎたとも言えます。前者は、南海トラフ大震災だけでなく、日本列島の随所で多発する地震や地震以外の天災の危険性を考えると、安全・安心な都市を守り保障するうえでも緊急のテーマであります。また後者は、人口減と高齢化とグローバリゼーションおよびIoTなどの技術変化の中でいよいよ深刻な展開をみせている都市問題のうち、緊急な討議を要すると思われるテーマについて検討を図るというものであります。

前者の第1回は、熊本県大津町の職員と現地調査に当たった弊研究所の調査研究アドバイザーの2人の報告をもとにして討議を深めました。また、後者の第1回は「空き家問題」(「都市政策」第164号)、第2回は「神戸市の復興対応支援 長期派遣職員の体験談」(「都市政策」第165号)をテーマとして報告討議しました。今回の第3回は、迫ってきた神戸開港150年をめぐって、神戸学の泰斗で、神戸外国人居留地研究会会長である神木哲男神戸大学名誉教授の実に興味深い独創的なご講演をお聞きしました。本稿では、ごく簡潔に神木教授の神戸開港とともに全国に先がけて取り入れられた生活文化についてのご講演の中から、今後の神戸の発展にとって示唆点となることをとりあげておきたいと思います。

その1つは、神戸以外の日本開港地では、開港時の都市区画や建造物が全く残っていないのに、神戸では居留地の区画・番地などが厳存し、しかも、いわゆる雑居地で日本人と外国人との生活文化の交流がみられたことです。これは今後の神戸港の発展についても示唆的です。ハードな諸施設の充実だけでなく、ダイバーシティを受け入れ、それを生かす試みが大切なことを教えています。

もう1つは、開港記念といえば、その視野が港に限定されがちですが、六甲山にゴルフ場をつくり、別荘設営と登山習慣とを開拓したグルームが典型的なように、開港に伴って日本に移住した外国人が六甲山開発にも大きく貢献したことです。そう言えば、神戸港が天下の良港になったのは、六甲山が瀬戸内海からせり上がり、広い平地をもった山頂をつくりあげたことを私たちは港と並んで重視しておかねばなりません。開港150年は、神戸市を日本の他都市と区別する山脈都市・森林都市にしているのです。神木先生のご講演の示唆は他にも色々ありましたが、開港150年に当たって、せめてこの2つだけでもとりあげておきたいと思います。

お蔭さまでセミナー参加者も毎回増え、好評を博しておりますので、私たちも回を重ねる毎に更にご期待に添えるものにしてゆきたいと念じております。