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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第118号

2016年11月1日発行

〜ハリケーン・マシューの教訓〜

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

この10月にハイチを襲ったハリケーン・マシューと関連してInternational New York Times紙(10月8-9日号)に厳しい警告文が掲載されました。時速150マイルというとてつもない暴風となったため、マシューによる高潮は20フィートにもなり、まるで津波のように1,000人を超える人と多数の家を流してしまったというのです。しかも、問題はライス大学の行った予測です。それによると、地球温暖化のせいもあって、今迄アメリカのヒューストン周辺を平均6年に一度襲っているハリケーンがそのうちより強烈になり、34フィート位の高潮を伴うようになるというのです。もし、そんなことになれば、ヒューストン周辺で死者は3,500人位になり、この被害は1906年のサンフランシスコ大地震はいうまでもなく、かつてニューオーリンズを襲ったハリケーン・カトリーナ、ニューヨークで起こった9.11のテロよりも大きくアメリカ史上最大の被害になるという警告です。

それだけではありません。この警告エッセイを執筆したノートルダム大学のR.スクラントン准教授は、次のことも取り上げます。すなわち、ヒューストン地区には、アメリカの天然ガスの35%が貯蔵されており、石油精製の25%、エチレンの44%などが生産されているだけでなく、ヒューストン港自体がアメリカの液体天然ガスの最も重要な積出港になっていることを考えると、その被害は人的被害に限らずアメリカ経済に途方もない大きな混乱を惹起するというのです。ヒューストンでは、かつて1900年の大暴風雨で死者が10,000人から12,000人も出たといわれており、そのあと高さ17フィートの堤防をつくって対応しています。しかし、いうまでなく、こうして予想されているハリケーンによる高潮はこの堤防では守れません。ハリケーン対策はあらためて、反射的で、行き当たりばったり的な対策では防げないという警告です。

最近わが国でも、地球温暖化と関連して台風の激烈化が予測される一方、一部では台風と地球温暖化との関係を否定する研究も発表されています。また米国にも政治的に、CO2を地球温暖化の原因としない強い意見もあります。しかし、つい最近、中国とともにその米国もパリ協定を批准することになりました。

わが国でもさらに研究を深化させ、台風の激烈化に備える体制を格段に整備することが望まれます。

そういえば、ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授は、つい最近なぜ米国メディアは、大統領選挙の主要テーマとして気象変化をとりあげないのかと問題提起しています。Japan Times紙も9月25日号に“Future typhoons:disruptive, deadly and destructive”という興味深い表題のエッセイを掲載しました。