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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第109号

2016年2月1日発行

〜公害克服と地球温暖化 ― 課題先進国日本(その4) ―〜

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

最近世界各国で異常気象が続いています。つい先日も米国の11州で大雪による非常事態宣言が発表されました。これより少し前には、カルフォルニア州では旱魃が続いているのに、ニューヨークでかつてなかったほどの洪水が発生するということもありました。スイスでもアルプスの降雪が極端に少ないだけでなく、温暖化のため欧州各地の河川の流量が少なくなって、水力発電にマイナス効果を与えるだけでなく、発電量の8割強を占める火力・原子力発電の場合でも水温があがるために冷却効果が悪くなり、発電容量が2割近く減少することになりそうだという意見さえあります。

ご承知のように気候変動に関する国際的研究である第1次評価報告書は1990年に発表されました。2007年の第4次評価報告書でも、20世紀後半以降に経験している海洋および大陸の平均気温の上昇は人為起源の温室ガス効果によること、このまま推移すると海面の上昇と海洋の酸性化、積雪の減少と猛暑、熱波、大雨、台風の大型化、最大風速の増加等々を導く危険性があることを警告していました。

この警告は今日いよいよ現実的なものになり、先般の温暖化抑止「パリ協定」では、「京都議定書」のときとは違って、排出削減にすべての国が取り組み、削減目標の設定とその達成も自主的に行なうことが約束されました。わが国はご承知のように、60年代から始った高度成長の中で、いわゆる公害の集中的爆発を経験しましたが、必死の努力でその排除に成功し、世界の注目を集めました。温暖化抑制の最初の国連会議が京都で開かれた一因もこうした背景によるものでした。従って、一部では、今回の「COP21」でもわが国が大きな役割を果すべきだという意見もありました。

そういえば、温暖化について強い政治的反対勢力をもつ米国などとは違って、わが国では四面海に囲まれ、台風をはじめ温暖化の危険性についての国民的認識も強いだけではなく、温暖化抑止の技術とその商業的利用でも先駆的な展開をみせています。例えば、都市ガス(天然ガス)などから取りだした水素を使って発電し、その際に発生する熱を給湯に活用する家庭用ガスコージェネレーション・システム(いわゆるエネファーム)もその一例です。このエネファームで削減されるCO2は、一戸当り年間1.3トンにも達するといわれます。この技術開発が進み、更なるコスト削減ができれば、一層大量に利用が促進されます。専門家によれば、不幸にして福島第一原子力発電所の事故を契機にして原子力発電の安全確保も大幅に改善されつつあるといわれます。もしそうだとしたら、CO2削減のためにも一層技術革新につとめ、安全確保の前提で、その一定量利用も、太陽光発電などの強化とも並行して進めることも出来ます。小型水力発電等々温暖化抑止の工夫の余地は更に残っています。

しかも、わが国は国内の温暖化抑止だけでなく、日本も拠出した国連の「緑の気候基金」も利用して途上国などの温暖化抑止プロジェクトに利用可能な技術を豊富に所有しており、それによる国際的な温暖化抑止にも貢献できる可能性もあります。真剣に対応しなければならないことです。