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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第108号

2016年1月4日発行

〜少子高齢化と社会福祉 ― 課題先進国日本(その3) ―〜

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

わが国は、世界で最も高い高齢化率(すなわち、総人口の中で65歳以上の人の占める比率)を、しかも、どこの国より早いテンポで達成した国ということになっています。その結果2055年には、年齢別人口構成で、80歳以上の人たちが一番大きな比率を占める国になると予測されています。

ご承知のように、わが国の医療保険は、全国民が参加し、米国や中国などとは根本的に違っています。それというのも、わが国の年金制度や医療保険制度は、昭和60年代の人口ボーナス時代、しかも高度成長時代に確立されました。従って、年金額や医療費が少々増加しても心配しないですむ時代につくられました。

ところが、今日のように急速に高齢化が進み、バブル崩壊後のような停滞した経済状態が続くようになりますと、社会福祉の維持が難しくなってきます。そのことは、65歳以上の高齢者を支える生産年齢人口が、1950年には4人近くいたのに、2055年には、1人程度に減退することでもよく示されています。

いまから5年も前に、ロンドン・エコノミスト誌は、「日本の重荷」という巻頭論文で、日本が多くの先進国が抱える少子高齢化の難問に最初に直面することになるとして、色々な課題を論じたことがありますが、この点もわが国が世界の直面する課題先進国の最たるものであることは間違いありません。しかし、どこの国でも既得権のようになった社会福祉の制度を変更するのは、岩盤破壊と同じく、実に困難です。しかも、高齢化率が7%から14%に達するまでの年数が、フランスが150年、スウェーデンが85年、イタリアでも61年あったのにわが国は25年しかありませんでした。こうした激変に対応する準備期間も短すぎます。

この変化に即応して社会福祉のあり方を改正しようとすれば、私たちは、現在だけの私たちのことを考えるだけでなく、これから先の変化を十二分に配慮して、自分自身のことだけでなく、子供たちや孫たちの生きざままで考えて決断をしてゆかねばなりません。そう言えば、かつて二宮尊徳は、「遠きをはかるものは富み、近くをはかるものは貧す」といいました。また、私が時に引用させて頂く但馬の小学校長さんだった東井義雄さんは、「下農は雑草を作り中農は作物を作り上農は土を作る」と述べておられます。

私たちは、これからの社会福祉を世界でも誇れるものに再構築するために、少子高齢化対策を含めて、日本創生のためにあらためて遠きをはかり、雑草や安あがりの作物をつくるだけでなく、その基盤となる土を作り直す覚悟をしなければなりません。小手先の工夫だけでは世界が直面している少子高齢化の課題解決の尖兵になることはできません。