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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第101号

2015年6月1日発行

〜新しい自治体の組織開発を図ろう〜

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

モノを作るのには、土地、労働と資本がなければいけないというのは周知の命題です。ところが、いまから125年位前に、A.マーシャルという経済学者が、これよりも大切な生産要素がある。それは、産業組織であるといいました。その産業組織というのは、(1)企業の組織、(2)産業内の組織(競争的とか、独占、募占とかいった)、(3)産業間の組織(いわゆる産業構造など)、および(4)国家の組織(特に国家と産業との関係)などがそれです。これは、モノづくりの成果を決めるうえで、土地・労働・資本といったモノよりも、人間が頭で考え出した組織の方が大きな役割を果すことを強調した議論でした。

そのあとも、これを支持する形の議論は色々ありました。決定的だったのは、R.M.ソローでした。かれは、国民所得の大きさを決めるのに、資本と労働の比率よりも、全要素生産性が重要な役割を果すことを実証しました。この全要素生産性を規定しているのは、政治制度の安定性とか、市場の開放度とか、教育とか、起業のしやすさ、労働市場の自由制度などのほか、ジェンダーなど、すべて従来生産要素といわれてきたものの組織的運用に影響を与える諸要因です。

そんなこともあって、比較的最近、経営学の分野でも「組織開発」ということが注目されるようになりました。企業組織のハードおよびソフトの側面の改善を図ることによって企業在来の目的を達成するために、その構造や業務の手順や技術や制度および職員の能力・スキル・モティベーション・感情や満足度などを充実・向上させて行くことに努めようとするものです。組織はもちろん、モノづくりは人が動かすものですから、その根底には人間育成があります。

いま、ご承知のように、世界経済は、ITとグローバリゼーションの展開の中で、先進国の停滞と新興国の発展をはじめ、大きな環境変化が起こり、既存の企業やそれをとり囲む諸組織の再検討を行なわざるをえなくなっています。同じことは行政や行政機構についても起っています。政府は、勿論、地方自治体でも、あらためて組織開発が重大な課題になってきました。大阪都構想などが起ったこともその一例です。政令指定都市も府県も解決を求められている色々な課題を担っています。

容易に想像できますように、先にのべた全要素生産性を規定する諸条件は、国により、地域によって独自性をもっています。従って、その独自性をうまく生かした組織開発が不可欠の要請になります。かつて神戸市は、都市経営の面でも先駆的な組織開発を行なって全国の注目を集めました。いまあらためて平成の組織開発に着手しなければならなくなっています。