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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第100号

2015年5月1日発行

〜地域創生の前提〜

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

人口減少の中で、国土面積の7割を占める山林地帯にある村落が消減しつつあります。しかも1964年に木材について実施された今日流にいえばTPPの導入のために、その山林経営も放置されたままです。したがって、やがては、日本の河川も荒廃し、豊かな海水も保全できなくなるといわれています。日本の国土は、いま全体として創生されねばなりません。たんに、人口減少のために削減するといわれている市町村や自治体の創生だけの問題ではありません。

人口減少があっても、労働生産性だけでもそれに応じて、あるいは、それ以上に増やせれば、国民所得は増大できるから心配しないでよいという議論もあります。

経済成長率は、労働人口増加率と労働生産性上昇率の和にほぼ等しいという経済学上の命題もありますから、この主張は間違ってはいません。ただ、その労働生産性の増加率を高めるためには、今迄設けていた色々な政治的・経済的規制を、いわゆる岩盤破壊といわれていますように、どんなに難しくても排除しなければなりません。また労働市場もできる限り自由化しなければなりません。それ以外にも、ジェンダー問題に象徴されています女性の労働力としての活用のほか、高齢者の労働力化率の向上や、色々な人の能力の向上を可能にする教育の成果などが引きあげられないといけません。こういう諸要因は、日本の中でも、地域によって大小いろいろになっていますから、地方創生のためにはそれぞれの自治体が特別な努力もしなければなりません。その意味ではその改革は決して容易ではありません。その達成のためには、私達は身を削る覚悟をして努力しなければなりません。

しかし、こうして仮に、国民所得だけ増やすことに成功しても、最初に述べた日本の国土の7割を占める山林部分はどうなっているのでしょう。日本は国土面積は中国の26分の1、アメリカの25分の1しかない小国です。しかし、国土面積中の森林比率は、英国の9%とは違って、世界でも5番目になる森林大国です。しかも日本より比率の大きいノルウェーやスウェーデンは、同じ森林地帯もわが国のような急峻な山岳ではなく、比較的平坦でよく管理されています。

こうして考えてくると、日本の地域創生はたんに国民所得の増減問題や労働生産性上昇率の問題だけではありません。国として、日本の国土をいかに維持し、他の国とは違った国民の生活発展を図っていくかを根本的に考え直してみなければなりません。東京一極集中や地方削減だけに眼を向けて議論していてはいけません。