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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第99号

2015年4月1日発行

〜激変期の思考について〜

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

いま私たちは、歴史の大きな激変期を迎えていると言われています。こういう時には、私たちは一体どこに行くのか、また、行くべきなのかについて実に多様な意見が交わされるものです。政治的に複数政党が競合していて、こういう多様な考え方が対立したままになっている国もあれば、単一の政党が支配的になってこれまでの伝統的な考え方を根本的にか、またはかなり大きく変換しようとしている国もあります。前者の場合には、政治的・法制的には変化は実際には見られないで混迷だけ続きます。後者の場合は、保守的な考えと変革的な考え方とが激しく対立し、そのどちらかに実際に動いて行くことになります。

いうまでもなく、保守であれ、変革であれ歴史に照らして、また、事態の必然的帰結としてその正当性が確証できるときには、私たちは自信をもって判断することができます。しかし、歴史的に今の事態と似たところがあるといっても、多くの場合、過去と現在の構造ないし背景は異なり、特にその中で生きている人間の行動には顕著な違いがあるのが普通です。歴史に照らすのも簡単ではありません。また、事態の変化を必然的と正当化する主張も、多くの場合、その人たちの永年の信念または経験的思考、ないしは、イデオロギーからの帰結であって、すべての人々の納得を保証するものではありません。社会・人文現象の説明の多くが、論者がこれまでにもっている自分なりの解答を人々に納得させようとする主張になっていることに留意すべきだといわれる理由もそこにあります。

問題は、にもかかわらず、時代の変化とともにある特定の主張が当然視され、急速に拡がってゆくことです。下手をするとこの流れに反対する人々は反社会的な人と受けとめられます。しかし、これは大変危険なことです。よく講演や論説がよかったといわれる理由は、自分の考え方と同じだったからというのが一般的です。しかし、本当に大事なことは自分が今まで考えたこともなかった考え方を示してくれる講演や論説を正しく評価することを通じて自分の見解を補正し、より深化させていけるかどうかです。

こう考えてきますと、激変期を民主主義を守りながら乗りこえてゆくためには、自分と同じ考え方に甘えるのではなく、自分と違った考え方を正しく受け止めたうえで自分の考えを再整理していくことが望まれます。つい最近バカになるほど本を読めという趣旨の本も出版されました。今こそ私たちは、色んな本を読み、その著者たちと心の中で対話しながら自分の考えを深めてゆくときです。みんなが言っているからというので安易に流れてはいけません。