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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第97号

2015年2月2日

〜阪神・淡路大震災20年で忘れられていること〜

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

あの阪神・淡路大震災から20年。私たちはあの復興についての様々な検証を行ってきました。その中で顕著に浮かび上ってきたのは、次に起こるとされている西日本大震災や東京直下型地震の被災規模の巨大さと深刻さについての情報です。私たちは、今まで、経験した大震災の光と影について真剣に対応してきました。このことの検証は今後も引き続き行わなければなりません。しかし、最近行われた「メモリアル・コンファレンス・in神戸2015」の基調講演で河田惠昭人と防災未来センター長が提唱された問題は、どうしても避けて通ることができません。すなわち、河田博士は、米国の災害対応の失敗と反省の中から、災害へのFirst Responderである州の知事へ権限が集中し(州兵、警察官、消防士)、州が郡において日常的に市町村と協議、連携し、会議では同一方向の複数の専門家が入って討議して意思決定できるようになっていること。また、一旦災害が発生した時には、連邦政府は、各省間、連邦政府と州政府との調整を率先して実行する体制をつくっているのに対して、わが国では災害発生のFirst Responderは市町村になっております。その市町村は消防の他は何の対応能力ももっていません。警察も自衛隊も県及び国の意思決定下にあり、自ら自由にリードできる情報、資源はありません。都道府県の災害対策本部に集まる関係機関の代表者は、単なる連絡員であって、意思決定ができません。さらに、避難指示は、命令ではありませんから拘束性がありません。こういう状態で、もし国難ともいわれるような大規模災害が起こったら、復旧・復興どころか、対応が支離滅裂になる危険性があると警告されています。

このご指摘を、私たちは一専門家の誇大警告と思ってはいけません。最近、明治維新と幕府解体の重要契機として、1854年の安政東海・南海地震(32時間差で連続し、死者約3万人)、翌年の江戸地震(死者約1万人、全壊・焼失約1.4万棟)及び更にその翌年の江戸台風(高潮発生もあって潰家約15万棟、死者約10万人)が取り上げられることが多くなってきましたが、もし、今言われていますような東京直下型や南海トラフ型の大震災が起こったら、それに対応できる政治・社会・経済体制が整備されていなければ、大混乱を生み出すことになりかねません。

かつて、貝原俊民前知事は、阪神・淡路大震災を20世紀型の近代資本主義の悲惨な結果として受けとめ、これからは21世紀にも通用する都市・国づくりを図る創造的復興をしなければいけないと呼びかけられました。貝原さんの理想とする創造的復興ができるためには、予想される大規模な国難災害が仮に発生しても、それに十分耐えうる政治・社会・経済体制が確立されていなければなりません。河田博士の問題提起の意義はそこにあります。