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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第93号
  2014年10月1日発行

 

 〜経済を見る眼のいろいろ〜

 

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 慰安婦問題についての朝日新聞社の対応とそれを巡る色々な動きは、モノゴトを見る眼の違いと、その怖さをあらためて教えることになりました。そう言えば、20世紀を代表するジャーナリストといわれたW・リップマンは、その著『世論』において、人間がある種の固定観念をもつことによって、そのイメージが左右されるといい、それをステレオタイプと名付けました。そしてこのステレオタイプが確固としている場合、人々の関心はステレオタイプを支持するような事実だけに向かい、それに矛盾する事実から離れやすい。ジャーナリストもこの危険性から自由ではないと強調し、しかも、世論は、こういうステレオタイプなジャーナリストの意見に動かされ易いと警告しました。この危険を避けるために、彼はステレオタイプ的な思考による粗雑な一般化を避けるために「むしろ」「おそらく」「もし」「一部分は」といった相対的な言葉におきかえるようにしたといっています。
 こういう発想は、経済学でも自覚されました。私が、大学の雑誌『國民經濟雜誌』に助手になって最初に執筆させて頂いたG・J・シュラーの論文「經済学の方法に於ける孤立主義」というのも基本的には同じ趣旨でした。すなわち、経済学者は、同じ対象をとりあげながら、学派の違いで全く異なった論理を展開しています。その原因は、彼らが夫々異なったイメージに基いて異なった答えをもち、それを説得できるように問題を設定しようとするからですというのです。彼はそれを“Answer-begging-question”の出し方といっています。
「経済をみる眼」もしたがってこのことを十分に頭において受けとめて頂かねば、なりません。
 そう言えば、私が有斐閣で他の二人の方との共同編集で『現代経済をみる眼』を出版しましたのは、昭和46年でした。そのあと、私だけの編著で『新・現代経済をみる眼』を出版しました。それは昭和57年でしたが、何れの本でも、私はこのシュラーの議論を紹介しながら問題を整理しておきました。
 最近、ある週刊経済誌で、「経済を見る眼」欄が注目され、また、ジャーナリズムでも活躍しておられるある経済学者が『経済を見る3つの目』という本も出版されています。ことにこの本の中では、ある先輩から教わったこととして、マクロを扱う「鳥の目」、ミクロを扱う「虫の目」、そして流れを判定する「魚の目」という興味深い取り上げ方もされていますが、そのどの目もステレオタイプであってはいけません。ジャーナリズムの世界では今も経済をみる実に多様な眼が示されています。出版社の皆さんは、その出版物の販売高によって、その企画の評価をされているのかもしれません。しかし、ステレオタイプになりがちな眼の正当性は、事実の展開によってのみ保証されることを忘れてはなりません。



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