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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第92号
  2014年9月1日発行

 

 〜21世紀の建築とまちづくり〜

 

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 JR大阪駅が改造され、それにつながるいわゆる「うめきた」にグランフロント大阪のいくつかのタワーが建設されて久しい。私は、つい先日、はじめてそのタワーの地下2階にあるナレッジキャピタルコングレコンベンションセンターで開催されたある会合に出席しました。
 JR三ノ宮駅から新快速に乗り、大阪駅でエスカレーターにのって3階に上がり、それからしばらく歩いて、またエスカレーターで2階に降りる。案内所でセンターへの道を聞き、タワーBまで行く。そこでまたエスカレーターに乗って1階に降り、また尋ねて地下1階行きのエレベーターに乗り、そこからまたエスカレーターで地下2階のセンターに漸く到着しました。
 センターの会場は、千人以上収容できるという素晴らしい大きさで、冷房はよく効き、上衣を着用していても寒い位でした。隣に座っている方々の話では、23度か24度位ではないでしょうかということでした。休憩時間に手洗いに行くと、よく見かける劇場での女性トイレのような長い行列、係の人の上の階にもありますからどうぞという何回もの声につられて、何人かの人達について上の階にエスカレーターで昇る。ところが、トイレに着くまでが大変で、あっちへ回りこっちへ回り、帰りの通路にも迷う始末でした。
 シンポジウムの基調講演で、ある方は、20世紀は人間中心の自然観で自然を破壊し、結局人間を不幸にしてきた。21世紀の科学技術は人を支えるものにならないといけないと問いかけておられました。私はこの基調講演を軸とするシンポジウムでのお話をお聞きしながら考えずにはおられませんでした。
 基調講演では、そのうち65歳以上のいわゆる高齢者が全人口の4割を占める時代がくることも触れられていました。ところが、この「うめきた」のビルづくり、まちづくりは、とても21世紀にくるといわれている高齢社会向けとは思えません。トイレ一つにしてもどういう計算でしょう。地震社会日本で警告をしておられる方々の中には、特にプレート型地震の長時間振動を頭において高層建築の危険性を強調しておられます。また、梅田地区は南海トラフによる津波で地下街への流入が心配されてもいます。自家用車を複数もってどこへ行くにも車を利用し、歩行力が減退している田舎とは違って、都会のまちづくりは、歩行時間を長くして高齢者の健康維持用につくられているという説もあります。しかし、巨大化したスーパーマーケットが、品物探しのための時間と長距離歩行を嫌われて閉店するようになった国もあると言われています。田舎者と貧困な途上国からの観光者向けに、ひらすら巨大化してきた20世紀型建築とまちづくりは、いま根源的に再考を迫られていると言わねばなりません。まちづくりと建築は、人を支えるものにならねばなりません。こういうビルの地下2階で、「世界を変えましょう」と呼びかけるのも皮肉です。



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