トップページヘ戻る
KIURロゴ

理事長 新野 幸次郎 巻頭言

「理事長 新野 幸次郎 巻頭言」一覧へ

神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第88号
  2014年5月1日発行

 

 〜神戸を人を育てる都市(まち)にしよう〜

 

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 私が奉職していた神戸大学の自由・真摯・協同という学風をつくられた神戸高商の校長水島銕也先生(以下、敬称を省略)の出身地大分県中津市を訪ねる機会がありました。ご承知のように、中津は、有名な福沢諭吉をはじめ、道徳科学の先駆者廣池千九郎など数々の著名な偉人を輩出している都市です。その中津は、有名な杉田玄白と一緒に「解体新書」を著した前野良沢が藩医であり、その前野の蘭学や儒学を保護し、賀茂真淵から国学を学んだ藩主奥平昌鹿のいたところです。徳川中期以降、多くの小藩は熱心に人を育てたといいますが、中津も藩校進脩館を創設し、蘭学者の藩主奥平昌高がとくに教育熱心でした。中津ではそうした環境もあって藩医も塾もつくり、福沢諭吉を教えた儒学者白石照山のほか、豊後日田の広瀬淡窓の「咸宜園」のように中津からも実に沢山の人達を集めた塾もありました。また、諭吉自身、慶応義塾には多くの中津出身者を入学させて、その中から複数の塾長まで生み出しました。そういえば、水島も福沢諭吉が指導し中津出身者が多かったと言われる神戸商業講習所で勉学に励みました。
 その水島は、明治35年の開校以来、今まで我が国の高等教育機関にはなかった色々な仕組を導入して、帝国大学にまだ経済学部のなかった時代から、実に沢山の偉れた人達を神戸高商で養成しました。神戸商業大学長の丸谷喜市、神戸経済大学長の花戸龍蔵、神戸大学長の田中保太郎、古林喜楽や福田敬太郎、一橋大学長中山伊知郎などのほか、政治家では石井光次郎、実業界では東京海上の鈴木祥枝、白鶴の嘉納治兵衛、東洋レーヨンの佐々木禮彦、トヨタ自動車の豊田利三郎、出光興産の出光佐三、鈴木商店・日商の高畑誠一、日商の永井幸太郎などをはじめここで一々名前をあげませんが、実に多くの一流企業の社長を生み出しました。当時の日本経済の発展をリードした紡績会社や商社の社長は殆ど神戸高商出身といわれるほどでした。
 そういえば、塾の発展で偉人を生み出したのは、もちろん中津だけではありません。その状況は全国いくつかの地でみられました。わが兵庫県でも、水島も私淑していた但馬の池田草庵の青谿書院も東大総長を二度つとめた浜尾新、琵琶湖疎水を開いた北垣国道、日本金融業の基礎を築いた原六郎など、名前をあげるとかぎりがないのほど沢山の偉人を生み出しています。
 混迷し、しかも、インターネットのような情報伝達機能の未曾有な展開をみている今日、人間を育てることはきわめて難しい問題を抱えています。しかし、明治維新期以上に多くの革新課題を抱えている今日、私たちはそれに対応し、その困難を克服するために、本当に問題を解明し、その解決に勇気をもって当たる活力ある人づくりをしなければなりません。そのために、私たちは阪神・淡路大震災からの復興につとめてきたこの神戸で新しい人づくりの活動をはじめなければなりません。「艱難汝を玉にする」といわれます。直下型大震災の中から立ち上がった神戸は、この時代に恰好な人づくりの場であることを覚悟しましょう。



〒651−0083 神戸市中央区浜辺通5丁目1番14号
神戸商工貿易センタービル18F

TEL 078(252)0984

FAX 078(252)0877

KIURバナー
トップページヘ戻る