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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第84号
  2014年1月6日発行

 

 〜天災と国・都市の歩みについて想う〜

 

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 一つの国の特殊性、とくに、優越性をその国の気候・風土などの地理的条件から説明することは適当でないというのは通説になっています。政治現象と地理的条件との関係を研究するいわゆる地政学が、のちにナチスの支持を得るようになってとくにそう考えられるようになりました。しかし、その国の優越性の根拠づけは別として、その国の歴史が地理的条件によって大きな影響を受けていることは間違いありません。私たちはかつて和辻哲郎さんの名著「風土」をはじめ、「ユダヤ人と日本人」を書いた山本七平さん、世界でもきわだった天災の国とし、その中で育った日本人の特性を強調した寺田寅彦さんなど例をあげるときりのない程沢山のこれについてのご主張を知っています。
 最近でも田家康さんが、異常気象との攻防につとめた日本の歴史についての著書を出版しました。また、南海トラフなどと関連して警告を重ねておられる津波研究の第一人者河田惠昭さんは、江戸幕府が倒壊し、薩長がリードした明治維新の背景に、1854年以来、3年続いて起こった(1)安政東海、南海地震(32時間差で発生し、死者3万人)、(2)安政江戸地震(死者約1万人、全壊・焼失約1.4万棟)、および(3)安政江戸台風(高潮発生で潰家約15万棟以上、死者10万人)があると主張しておられます。黒船来襲で大きく揺れたあの時期に、混迷した江戸幕府がこの連続した巨大天災の対応に苦悩したことは十分想定できます。
 最近も、南海トラフ地震だけでなく、中央防災会議では首都直下地震の巨大な被害予想をしています。また政府の地震調査委員会は、今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率に基づいて「全国地震動予測地図」を発表しました。私たちはこうした天災と私たちの国や自治体の歩みについて真剣に考えなければなりません。
 しかし、地震警告の連続の中で、私たちが無視しがちな災害に風水害があります。時速315キロ(秒速87.5メートル)といわれる先般のフィリピン台風のような台風は、CO?増大による海水温度上昇とともに発生位置が北上する危険性があるともいわれます。神戸は、昭和に入ってからでも二度大規模な六甲山水害を経験しています。私たちは裸山になっていた六甲山を、西暦1902年の植林開始以来、服部良一さんが「青い山脈」の作曲のきっかけとなったといわれる見事な山にしました。しかし、1964年の木材輸入自由化来、安価な輸入木材に押されて経営できなくなった日本の森林は、六甲山でも放置されたままです。極端気象に襲われる可能性もでてきた六甲山を、世界ではじめての大都市直下型地震を経験したわれわれは、全国に先駆けた森林保全によって、日本の新しい歩みを確立しなければなりません。



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