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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第83号
  2013年12月2日発行

 

 〜司馬遼太郎さんが神戸に望んだこと〜

 

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 来月には、19周年がやってきます。いうまでもなく、阪神・淡路大震災のことです。あのとき、司馬遼太郎さんは雑誌「神戸っ子」に、大震災にあった神戸について文章をよせられました。その最後は、「やさしい心根の上に立った美しい神戸が、世界にただ一つの神戸が、きっとこの灰塵の中からうまれてくる」と結ばれていました。司馬さんは、大学時代の親友陳舜臣さんと陳徳仁さんが神戸の人でもあったこともあり、神戸には時々こられていました。その司馬さんは、月刊「神戸っ子」にかつて10回に亘って「ここに神戸がある」という連載を掲載されました。司馬さんが亡くなられたあと、この題名で小泉美喜子さんが司馬遼太郎追想録を出版されましたから、皆さんの中にもお読みになった方が多いと思います。この追想録の中には、この他に、同誌に13回連載された「問わず語り」のほか、白川渥さんと竹中郁さんとの鼎談や小泉さんによる新春インタビュー「神戸よ、美しい成熟を」も入っており、しかもすべてのカットをわが中西勝さんが描いておられる稀有な出版物です。
 司馬さんは、小説は少年の心がないと書けないと仰っています。私は最近あるきっかけから、本箱に収めていた司馬さんの著書に加えて、新しく数冊の本を買い集めて司馬さんの所説をかみしめることになりました。司馬さんは仰る通り少年の目をもって、街道を行くだけでなく、広く世界や日本のことを学び、しかも、深く自分で考えてこられた人です。私はこの本や「街道をゆくシリーズ」の「神戸・横浜散歩、芸備の道」などでふれておられる神戸論で色々考えさせられました。
 限られた本欄では具体的に言及できません。ただ、司馬さんは、神戸は日本の神戸だけでなく世界の神戸であるというホコリをもって、東京とは違う都市になってほしいといっておられます。幸か不幸か、東京とは違う「世界に一つしかない神戸」への道が、いま大震災の中から生れつつあります。東日本大震災の復興とは違って、復旧だけは国でやるが、復興は自分でやりなさいとつきはなされていた神戸は、大きな負担になっていた財政赤字も削減して、立ち上がりつつあります。世界初の大都市直撃の大震災からの復興という経験は、神戸にかつて日本の都市とは違った街づくりの視点を備えさせました。またその時頂いた国の内外からのご支援に報いるために復興の問題点を公開し、その後起こった内外の天災にその経験を伝え、それからの復旧・復興を必死に支援してきています。この心根が更に強固なものになれば、東京にはない新しい街づくりが可能になります。そのために私たちは、今までどこの街ももてなかった発想を開発しなければなりません。「世界に一つしかない神戸」は、ただ地形だけであってはいけません。



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