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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第81号
  2013年10月1日発行

 

 〜自由貿易試験区構想と中国の危機意識〜

 

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 中国政府はこの9月29日に上海に28.78平方キロに及ぶ自由貿易試験区を設置すると発表しました。新聞報道だけでまだ詳細は判りません。ただそれによると地区内では貿易や金融が自由化され、投資の簡略化、行政の簡素化が図られ、インターネット規制さえも大幅に緩和されることになるとのことです。それによって中国本土の中に第2の香港をつくろうとするもので、これから他の地区にも拡大するといわれています。
 中国では、トウ小平の改革開放以来、高度成長が達成されました。しかもいわゆる「先富論」もあって、税による所得再分配政策も十二分に行われず所得格差は顕著に拡大しました。また省・市などの地方自治体による地方債発行が出来ないなかで自治体間の成長競争が行われてきた結果、自治体は企業誘致による国有土地の利用権売買による収益確保に走ることになりました。そのため経済発展に伴って農民の生活基盤となっていた土地は、一方的にその利用が変更されることになり、全国各地でそれに伴う暴動が発生し、所得格差も拡大してきました。習政権の権力闘争とまでいわれた重慶の薄熙来裁判はそうした矛盾の象徴的な帰結という意見もある程です。
 おまけにリーマン・ショック以来の巨額の政府支出とバブル処理の仕方と世界経済の低迷などのために発生した経済成長率の低下がこれまでの中国経済構造の大変革を要請することになりました。習近平主席は、この構造改革を断乎として行なうと宣言し、李克強首相もこの政策に抵抗する既存国有企業や金融関係企業などに意を決して立ち向かうと述べています。
 しかし、これはトウ小平の改革開放よりも難しい改革を決心しようとしているということになります。トウ小平の改革開放が着手された時代は、中国経済は文化大革命後の低迷を脱しえず、経済成長率は低く、所得格差も小さく、改革開放への抵抗努力も弱いどころか、多くの階層によってその方向が圧倒的に支持されました。ところが、今度の構造改革は、従来の社会主義的市場経済方式の改革をも含むもので、既存の体制下で優越性を保っていた国有企業や社会主義的権力構造の改革を迫るものにならざるをえません。その結果巨大化した既得権益の猛烈な抵抗も予想されます。いまわが国でも、安倍内閣が多くの部門で既得権益の解体という難題に直面していますが、中国のそれは、体制そのものの変革をも導きかねない大改革への挑戦です。
 いま私たちは、尖閣諸島問題にみられるような中国の対外姿勢だけに注目しがちですが、しかし、いま中国がとりあげているこの経済構造改革の行方により強く注目し、私たち日本国の構造改革の遅れを意識し直さなければなりません。
(トウ小平のトウは、のぼるへんにこざとへんのトウです。)



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