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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第80号
  2013年9月2日発行

 

 〜わが国の大学・研究機関の競争力向上について〜

 

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 大学や研究機関の研究競争力が問題になるのは、それが世界の経済的発展と各国民生活の向上を可能にする一つの基礎的条件だからです。その限り、この8月6日に文科省がわが国の22の大学と研究機関の研究能力向上のために補助金を支出する決定をしたことはそれ自身大変結構なことです。
 しかし、経済発展や国民生活の向上を可能にするのは、自然科学の充実とそれに伴って生ずる技術革新だけではありません。そのことを論証するために、有名な生産関数をとりあげてみましょう。よく知られていますように、従来経済学の生産関数は、Y=f(L,K)の形でとりあげられていました。国民所得(Y)は、労働(L)と資本(K)とがふえると増大するというのがそれです。ところが、研究が進んで、この式はY=Af(L,K)というように変えられました。すなわち、労働と資本をふやした効果よりも、全要素生産性といわれるAの役割が非常に大きいという認識が生まれたからです。
 ところで、この全要素生産性は、政府の規制が少ないとか、市場や企業が競争的であるとか、雇用が男女の別なく効率的に行われているとかいった市場の開放度などが、科学や技術の発展をも含めて市民所得の向上に大きく寄与しているとの認識を示しています。そういえば、最近一部の産業発展に象徴的な新興国の市民所得の成長をみていると、科学や技術の発展というより、その製品の利用の仕方や国別の顧客の需要の仕方を工夫するだけで発展しているものもあります。その意味では、全要素生産性の内容に注目する必要性がきわめて大きくなっているといえましょう。
 考えてみると、経済発展の変革を可能にしたアダム・スミスの「国富論」やJ.M.ケインズの「一般理論」もこの全要素生産性の向上を可能にする社会経済機構や国民経済の運営の仕方の発見でした。これは、大学や研究機関の充実のあり方に一つの示唆を与えています。仄聞(そくぶん)すると、今回の文科省の決定では、神戸大学には、自然科学系の大学付置研究所はないけれども、永い歴史と伝統をもつ社会科学系の教育・研究府が充実しており、その協力体制の確立が評価されたようでもあります。永年神戸大学に勤務したものとしては大変有難いことです。しかし、社会科学系の教育・研究府として輝かしい成果をあげてきた一橋大学が今回の選考から外れているのは、上記の趣旨からみて残念なことです。わが国の研究競争力の真の強化のために是非再検討して頂きたいことです。
 また、ノーベル賞の対象となるような研究は、大学・研究機関の補強だけで生まれる訳ではありません。わが国の研究競争力の強化のためには、特定大学や機関だけでなく、全般的な教育・研究活動の強化が不可欠であることも忘れてはなりません。
 これは社会改革の意欲とエネルギーをつくり出すために、いま何が必要になっているかを暗示しています。



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