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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第75号
  2013年4月1日発行

 

 〜コミュニティ・ビジネスとしての
       スーパービジネスの古くて新しい視点〜

 

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 先日NHKテレビで、「過疎のまちで前代未聞の挑戦」と題する放映がありました。広島県の熊野町の一画が過疎になって、今迄営業していた小売店がすべてなくなり、困った住民が生活のために無給で働くスーパーをたちあげて苦労しているという話です。そこでは平均年齢68歳の人々が従業員になって、町民の生活維持のために立ち向かっている姿が映し出されました。
 放映はそれを紹介するだけで終わりましたが、これはスーパー、あるいは、商業のもつ役割に新しい視点を提供するものになっています。商業活動は、普通、営利事業で、それを営む人の私的事業と考えられてきました。ところが、自給自足できない状況で孤立した地域の場合、生活に必要な物を供給するという仕事は、コミュニティが存続するための必要不可欠の事業、すなわち、いわゆるコミュニティ・ビジネスになります。そこで、熊野町をコミュニティとして守り続けようとする人達は、無給で諸商品を仕入れ、販売の仕事に携わり、売り上げを増やしスーパーを自立させるのに必死になっているのです。寝たきりになった人達のところを廻り、必要な商品を自分たちのもっている自動車で届けるだけでなく、スーパー「ふれあい広場」をみんなの談笑の場にする努力も続けているのです。
 そう言えば、かつて「海賊とよばれた男」という本でも有名になった出光佐三さんは母校国立神戸高等商業学校で教えられた士魂商才の理念と商業はただ私的利益をあげるためのものではなく、生産されたものを本当に必要としている消費者に届ける社会的な仕事だという流通の大義を胸に秘めて出光興産を創りあげました。
 よく考えてみれば、モノづくりやサービスの提供は、もともとそれを必要とする人達のために行われるものです。しかし、その人達は独りで生きている訳ではありません。みなコミュニティの中でしか生きられません。したがって、モノやサービスは、孤立した個々の消費者のためだけではなく、コミュニティの中で生きている消費者を満足させる形で提供されなければなりません。この視点は、これからのビジネスの在り方に新しい視点を提供するものでもあります。
 熊野町のスーパー「ふれあい広場」も、いつまでも無給の町民労働で存続できるわけではありません。町民の皆さんが安心して生活するためには、近くの生活協同組合の支援を受けるか、より持続可能な方法を見出さなければなりません。しかし、今回の放映は、スーパーをコミュニティ・ビジネスにすることを通じて、ビジネスの在り方に新しい問題提起をしていることは間違いありません。私たちは、このことの意味を反すうしてみなければなりません。



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