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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第72号
  2013年1月4日発行

 

 〜シンガポールから学ぶこと〜

 

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 1981年のポートピア博覧会の前後、わが国は高度成長を重ねて、米国に次ぐGDPをもつ国になってきました。博覧会のときのシンポジウムの基調講演者となったK.E.ボウルデング教授はその時、朝日新聞でこう述べて注目を集めました。「モノをつくるのに必要なものは、エネルギーと資源・資材とノウ・ハウの三つである。日本はこのようなエネルギーも資源・資材も殆どないのに、徳川時代の寺子屋教育に象徴されるような、ノウ・ハウの蓄積のお蔭で経済発展をしたのである」というのがそれです。ところが、いまのわが国では、教育費は削られ、モノづくりでもかつてのソニーやシャープのような世界をあっといわせるような独創的な技術革新も出来なくなって家電製品でも他国との競争に負けています。
 そんな時に私たちに反省を迫る国はシンガポールです。シンガポールは面積は淡路島位しかありません。おまけに、日本以上に資源もエネルギーもありません。生活に必要な水でさえ、マレーシアから供給され、最近は、海水の浄水化で補っています。人口は500万人位ですが、そのうち、4割近くは外国からの移民もしくは短期移住者です。そのシンガポールが、最近では、1人当り国民所得水準で日本のそれを追い越すようになってきました。その大きな原因は、少ない国民への教育と外国からの優れた移民の導入です。それは、シンガポールの国家予算のうち、教育比が23%を占め、国防費の26%に次ぐ大きさになっているのを見ても判ります。人づくりにこれだけ力をいれている国は他にはありません。
 わが国の新内閣はデフレ克服を一つの目標にし色々手を打とうとしていますが、ただ金融を緩和しただけではデフレ克服はできません。企業家のアニマル・スピリットが強烈になり、技術革新能力が高まり、新しいデイマンドを創造できる力が生れないといけません。この力を培うのは、何といっても教育です。もっとも教育といえば、最近は国際学力試験などの知識能力順位で測ろうとしがちですが、それだけではいけません。一番大切なのは、暗記能力ではなくて、それを社会と人間性向上のために役立てようとする知恵です。
 そう云えば、江戸時代、寺子屋で最初に学んだ教科書というのは、「実語教」という書物でした。この本は、二宮金次郎も福沢諭吉もみな学んだ本だといわれます。これをあらためて読んでみると、生計を立てるためというより心を育てるための色々な教えを述べている本です。
 その意味では、いまなによりも必要なのは、社会のために働ける人間になるという意欲づくりです。もし、私たちがそれに成功すれば、もう一度私たちは人口減少社会でも明るい希望をもてる経済社会づくりが可能になるでしょう。シンガポールは日本より遅れて発展をしてきました。そのシンガポールが私たちに、もう一度頑張れと呼びかけているのです。



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