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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第70号
  2012年11月1日発行

 

 〜最年長者の心がけ〜

 

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 私は、最近ある会の最年長者になってしまいました。この会は確固たる理念をもちそれを守って行動されている優れた方々から構成されていますから、そのために私の責任が重くなるというようなことはありません。今迄どおりの心がけでつとめて行けばよいのです。しかし、おかしなもので、最年長者になると、皆さんにご迷惑をおかけする存在になってはいけないという気持ちだけは強くなるものです。
 皆さんもみなそうだったと思いますが、私たちは子どものときから両親や先生や先輩・友人から色々と指導助言をうけて成長してきました。その過程でまたいくつかの社会的制約も自覚して行動してきました。しかし、残念なことに私の年齢になってきますと両親も先生もみな先立たれ、先輩・友人の多くも逝ってしまっています。こうなると、単刀直入な諌言をうける機会を失ってしまうことになります。それを補うためには、それに代わる人を見出すか、または、その役割を果たして頂ける優れた先人の著書を熟読・熟考するしかありません。
 それもあって、私はこの頃、専門にしてきた経済学の一領域についての著書・論文の他に、今迄親しんできた哲学や宗教や人間に関する本をひもとき考え込むことが多くなりました。比較的最近も、小泉信三さんの「平生の心がけ」を読み直すことがありました。小泉さんが有名な福田徳三先生からどれだけ厳しい指導を受けられたかは同じ福田先生の指導を受けられた私の恩師宮田喜代蔵先生からよくお聞きしていました。その試練を経て小泉さんは、後に慶應義塾大学きっての名塾長になられ、ご承知のように1949年以降東宮御教育常時参与にもなられました。小泉さんの「平生の心がけ」は、その過程で執筆されたものです。
 その中の一つである「国土の姿」については、「国土と日本人」という大石久和さんの本とも関連して、私は六甲山についてのエッセイの中でも引用させて頂きました。私は最初に申しましたようにある会の最年長者になって、これからは小泉さんが「平生の心がけ」で述べておられるように、生きてゆかねばいけないと思うようになっています。
 かつて連合軍最高司令官として日本占領の最高権力者となったD.マッカーサーは、のちに大統領と対立して解任されました。その時彼は「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」という有名な言葉を残しました。私が最初にあげました会は幸いにして権力を伴う会ではありません。したがって、こんな言葉を述べる必要もなく、最長老になっても秘かに一人で「心がけ」を磨くだけで生き残って行けます。ありがたいことです。



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