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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第69号
  2012年10月1日発行

 

 〜「森林飽和」と国土の危機〜

 

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 六甲山の保全について発言するようになってから、私は森林や国土についての本を買い集めたほか、図書館からも何冊か借りだして読み、少しはより深く考えることができるようになりました。もちろん、専門家からみれば、まだまだ不充分で素人レベルにしか過ぎません。私が六甲山に危機感をもつようになりましたのは、このメールマガジンでさきにもふれましたように、私の勤務していた神戸大学の六甲台キャンパスの大木が、植林して50年位で間伐せざるをえなくなったのに対して、六甲山の森林は、今から110年位前に植林されているのに、その後ほとんど間伐もされていないことに気づいたからでした。
 有り難いことに、私が気づくよりも遙か以前から六甲山の保全に注目し、ご尽力をなさっていた方が神戸でもいらっしゃることも知りました。つい最近も、太田猛彦さんという東大の名誉教授の方が「森林飽和―国土の変貌を考える」(NHKブックス,2012年刊)という本を出版されました。この表題は私の六甲山についての想いと同じではないかと直感し早速拝読しました。そのとおりでした。太田先生は、日本の里山が、人が間伐も手入れもしない奥山のようになってしまっていることの危険性を見事に述べておられます。この太田先生の本は、明治中期までは、日本の山々が、ほとんどすべて、はだか山になった経過やそのあと植林されて世界でもトップレベルの森林大国になったことだけでなく、国土の変貌の実態とそれに対応する方策について実に多くの示唆を与えております。日本の国土については、つい最近、大石久和さんが、「国土と日本人−災害大国の生き方−」(中公新書、2012年刊)を、また高橋裕さんが、「川と国土の危機−水害と社会−」(岩波新書、2012年刊)などを相次いで出版され、それぞれ、日本の森林、したがって、また六甲山の森林を考えるうえでも大変参考になる問題提起をしておられます。私も都市資源としての六甲山を守ろうと思えば、何をどうしなければならないかについて私どもの研究所で出版している「都市政策」の第149号(2012年10月刊)に執筆しました。その中でも、こんなことになった一因は、1964年にいまTPPで問題にしている関税ゼロ化を木材と木材製品とについて実施し、それに伴う対策を一つもとらないで放置してきたことによると書いておきました。前記の東大名誉教授の高橋さんは、「森林、水源地に限らず、わが国は全国土を視野に入れた土地に関する哲学もなければ、土地政策もないに等しい」と指摘しておられます。
 近く、神戸新聞社が世話人になって六甲山大学が開校されます。私たちはそのなかで、森林についての哲学も構築して行かねばならないと考えているところです。



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