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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第67号
  2012年8月1日発行

 

 〜イチロー移籍の投げかけたこと〜

 

公益財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 つい最近、あのイチローが11年余活動をしてきたシアトル・マリナーズを辞して、ニューヨーク・ヤンキースに移籍することが発表されました。彼自身は、38歳になった今、20代前半の人を中心に編成されているマリナーズを辞めることを考えたのだと言いました。
 アメリカの新聞報道によりますと、ヤンキース側は、打順は8番位で、左ピッチャーのときは打席に立てないかもしれないなどの条件を提示しました。かつてマリナーズで安打数でもメジャー・リーグの新記録を樹立し、守備面でも10年余も続けてゴールド・グラブ賞を受けたイチローがよく我慢して受け入れたものだと思いました。報道によりますと最近の打率の低さなどを自覚して、今所属しているリーグ最下位に近いチームからいわゆるコンテンダー、すなわち、優勝などをねらえるチームに籍を移し、そこで全力をあげて散ろうと考えたのではないかといわれています。いつもユニークで、見識の高さを象徴する発言をしてきたイチローが本当に何を考えぬいて今回の決定をしたのかはよく判りません。しかし、この決断をした彼は、記者発表をしたその日に、永年世話になっていたホーム球場で、しかも移籍先のチームの選手としてバッターボックスに立ちました。こんな行動は義理人情中心に生きている日本人には難しい行動かもしれません。しかし彼は、帽子を脱いで深々とお辞儀をして打席に立ちました。しかも興味深いことにマリナーズ・ファンもその彼をスタンディングオベーションで迎えました。
これはプロとは何だろうか、好きなチームを応援するプロ野球ファンとは何だろうかといった色々な疑問に対する回答を迫る状況でもありました。
 イチローの移籍は、こうしてよく考えてみると、イチローが自分の能力の限界を自覚し、アメリカのメジャー・リーグからの最終活動を表明したものだと解せます。彼らしい行動といえるかもしれません。
 私は今回のイチローの移籍を聞きながら、かつて住友財閥の総理事をされ、別子銅山の改革をはじめ歴史に残る偉業を達成された伊庭貞剛さんのことを想起しました。伊庭さんは、住友財閥の大番頭で、渋沢栄一さんのように自分の名で事業開発された方ではありません。しかし、その活躍は、渋沢さんに並ぶと言ってよいほどの偉大な実業家でした。その伊庭さんは、大事業達成後58歳で引退され、多くの方々から、敬愛されて80歳まで生きてこられました。こうした方々の生き方を想うと、プロとして、あるいは、求められる事業担当者としての能力を欠いたまま生きてきた私などは、自分の生き方を反省せざるをえません。



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