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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第60号
  2012年1月4日発行

 

 〜日本人の心を育てた「実語教」〜

 

財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 神戸市の『次世代のこどもを育む市民会議』は既に9回開かれています。その結果、具体的にどのような政策が策定され実施されようとしているかは、残念ながらまだ明らかにされてはいません。しかし、次世代の日本をつくるこどもたちをいかに育てるかはいうまでもなく、決定的に大切なことです。その意味ではこの市民会議の意義はいくら強調してもしすぎることはありません。
 ご承知のように、阪神・淡路大震災のときも今度の東日本大震災のときも、日本の被災者は沈着に行動し、お互いに暖かい心で助け合って、世界中の人々から大きく賞賛されました。こうした日本人の心は、私たちの先輩たちが作ってきたものです。こういう心がなぜ生まれたのかについては色々な説があります。残念ながらここでは紙面上の制約もあってそれらについて詳しく述べる訳にはゆきません。
 ただ一つ、ここでは、私も最近になって初めて知った「実語教」について説明させて頂きます。これは、私も理事の末席を汚しています関西師友会の白石武之さんが、慶応元年に出版された「実語教具註抄」という本を底本としてつい昨今出版されたものです。この本に述べられていることは、最初は弘法大師がいわれたことのようです。その後明治になるまで千年の間、日本のこどもたちはこれを学び、江戸時代の寺子屋では必読書になったといわれます。白石さんは、かって二宮金次郎さんもあの福沢諭吉さんなどもこの「実語教」を学んでいたといっておられます。
 この本は、「山高きが故に貴からず、樹有るを以て貴しとす」からはじまって、四十いくつの格言というか、人の道についての呼びかけがなされています。この本は、この山についての言葉の次にある「人肥たるが故に貴からず、智有るを以て貴しとす」を基本として、何よりも勉学をすすめるとともに、天地の如き父母を敬い、日月の如き師君を尊び、友と交わりて争わず、兄には礼敬を尽くし、弟には愛顧を致せと呼びかけています。そこでは、また「他人を敬えば、他人もまた我を敬う」
とか、国家についての言及は別としてまるで明治23年の教育勤語のような徳育、あるひは人間形成の基本的な方策を述べています。
 ご承知のように、江戸時代および幕末・明治初期にわが国を訪れた外国人たちは、わが国のまちの美しさとそこに住む日本人の勤勉さや人間的素晴らしさに驚嘆しています。残念ながら最近は、かって両親を失った孤児たちの憩う場であった養護施設が、家庭内暴力のために家におれなくなったこどもたちの住いの場になったといわれます。一番大切な徳育が見失われて知育だけが中心になり、何ごとにも積極性が望まれるのに、逆に逃げごしになるこどもたちが多いともまたいわれます。私たちはあらためて、素晴らしい日本人の心をもう一度掘り起こして、次の世代を担うこどもたちに伝えなければなりません。



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