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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第59号
  2011年12月1日発行

 

 〜生産要素としてのエネルギー〜

 

財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 経済学は、それが学問として成立するようになった時から、モノを作るのに必要な要素として土地、労働および資本の3つをとりあげてきました。この考え方に従いますと、一国の生産物の量の大小は、この3つの生産要素の量の大小および質のよしあしに依存することになります。そう言えば、戦前には、わが国は土地が狭く、また資本も少ないのに人口が多いために人々が貧乏なのだといわれ、少しでも豊かになるためには、もっと土地を沢山もてるようにならなくてはいけないと考えられたものでした。この考え方は、容易に推察できますように、外国の侵略まで正当化しかねない危険性さえもっています。
 しかし、考えてみると、昔から経済活動にとって一番関心の大きかったことは、それを行っている人達がどれだけの収入をえることができるかということでした。その観点からモノづくりを考えてみると、モノづくりに必要な3つの生産要素である土地、労働および資本を提供している地主、労働者と資本家が、どれだけ収入をえるべきかを示してくれる伝統的な生産要素論が尊重されたのはよく判ることです。
 ところが、K.E.ボウルデングというアメリカの経済学者がこの生産要素論は出来た生産物を3つの階層(地主、労働者および資本家)にどう分配したらよいかを説明するための議論で、言葉の本当の意味での生産要素論ではない。本当の生産要素論は、モノをつくるのには、エネルギーと資源とノウ・ハウとが必要だとする理論であるといい、なかでも最も大切なのは、ノウ・ハウで、エネルギーも資源も稀少な日本がアメリカに次ぐ当時世界第二の経済大国になった理由も日本のノウ・ハウの水準の高さにあると言いました。彼は、わが神戸市がポートピア博覧会をもちました1981年にはそれを記念する講演会にもきて、この点での日本の素晴らしさを朝日新聞にも書きました。
 早いものであれから30年、私たちは、ノウ・ハウの開発にも遅れをとるようになり、バブル崩壊後は、日本経済はデフレ状態に落ち込んだままで低迷しています。そこへ、3.11の東日本大震災が勃発し、福島の原子力発電所の事故を契機にして、極度の電力不足問題に苦しむことになりました。そこであらためて生産要素としてのエネルギーの大切さを痛感するようになったわけです。往往にして停電が発生するだけでなく、電圧も変化し、いま世界の産業をリードしている半導体の生産ができないばかりか、コンピュータでも自動電圧調整器を備えないと使えない欧米やいくつかの外国とは違って、良質で豊富な電力に恵まれてきたわが国は、敗戦直後の電力不足以来、はじめてグローバル化と世界的な経済不況の中でエネルギー不足問題に直面することになりました。
 私たちはあらためて、モノづくりだけでなく一定の生活水準を維持してゆくのに必要な生産要素論としてのエネルギー問題を真剣に自分の問題として受けとめなければならなくなったわけです。



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