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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第55号
  2011年8月1日発行

 

 〜指揮者の蘊奥を究め始めた佐渡裕さん〜

 

財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 つい、最近、県立芸術文化センターの芸術監督佐渡裕さんから、ベルリン・フィル演奏のときのCD、MBSとNHKのテレビ放映を収めたDVDとPHP文庫『僕が大人になったら』を頂きました。佐渡さんとは色々なことで親しくさせて頂いていますが、今回の演奏会には私も感動いたしました。
 佐渡さんは、今回の素晴らしい演奏について、自分が指揮棒を振ったことなど忘れていましたと語って涙を流しておられました。そういえば、頂いた本の中でも「楽団員の心を“must”(〜しなければならない)から“want”(〜したい)に変えるのが僕の役目」と述べておられます。ベルリン・フィルでの指揮の中で佐渡さんは、それぞれの楽器の演奏では世界を代表しているとの自信をもっているベルリン・フィルの楽団員全員が、文字通り“want”の気持ちに変わった瞬間というか、ある一定の時間を経験されたのだと思います。
 佐渡さんは、よく、小学生のときから、大人になったらベルリン・フィルで指揮をしたいと考えていたといわれました。しかし、佐渡さんはその念願が達成できたというので涙を浮かべられたのではないと思います。指揮者の役目、すなわち、すべての楽団員が、“must”から“want”に変わってくれたことに無上の歓びを覚えられたのだと思います。
 私は、かって、この欄で「人の心を掴める人になりたい」という題で、2004年のオリンピックのサッカー日本代表の監督をつとめられた山本昌邦さんのことをとりあげさせて頂きました(2010年12月1日発行)。サッカーの日本代表になる若者たちは、みな大変な能力をもった自信家で、監督の言うことなど聞こうとする人達ではありません。山本さんはその人達が自分で最善を尽くしてやろうと思うように出来るかできないかで監督のリーダーシップが決まると言っておられました。佐渡さんはそれと全く同じことをあの瞬間身体で感得されたのだと思います。私が今回「指揮者の蘊奥を究め始められた佐渡さん」という表題にさせて頂いた理由は、そこにあります。私は、これからの佐渡さんは、きっと今迄とは違った境地で指揮棒を振られるようになるのだろうと思っています。
 ただ、佐渡さんの境地を想うたびに、私は東日本大震災からの復旧・復興に苦しんでいるわが国の状態を考えずにはおられません。今わが国には、有史以来最大といってよい地震と津波に加えて文字通りはじめての経験である原子力発電所事故で苦しんでいる人達がおられます。また、この方々を何とかして救援し、一日も早く復旧・復興して頂くために尽くしたいと思う沢山の人々がいます。ところが不幸にして、その力を一つにまとめて、かってない素晴らしい日本国を創生しようと全国民をリードする人がいません。しかしながら、この悲しい状態をただ悲憤慷慨していてもはじまりません。私たちは、バラバラでもよいから、少しでも手を握れる人を集めて、大震災からの復興に努めなければなりません。

※蘊奥(うんおう):学問・技芸などの奥深いところ



 

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