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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第54号
  2011年7月1日発行

 

 〜東日本大震災に思うこと(その4)〜
    ―グローバリゼーションの中で
               原点に帰って考えることの大切さ―

 

財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 復興構想会議の報告がこの6月25日に発表されました。16年前の阪神・淡路大震災のときには、焼け太りになるような施策は駄目というので、被災地兵庫・神戸が提案した復興特区構想は認められませんでした。その点、流石に今回の震災が阪神・淡路のときとは比較にならぬ困難を抱えていることもあって、あのときいわれた一国二制度は認められないという言い方もされませんで(もっとも、阪神・淡路大震災のあと沖縄対策として一国二制度になる特区が認められるようになっていましたからこの言い方は既に使えなくなっていました)、巨額な財源措置を必要とする特区が認められました。さらに、被災地域の多様性も考えて、被災地が五つの型に分類され、夫々独自な復興対応も構想されました。
 財源問題でも、経済学を専攻した私などもこの提案に、次の二つ程度加えれば、それ以上は現状では望めない内容であったと思います。一つは、岩田一政さんも主張されてましたように、民主党のマニュフェストの一部をこの緊急事態で改案して 5兆円近くを調達することと、もう一つは、通貨危機のときに韓国で危機克服のため金の供出を国民にアピールされたのと同じ精神で、わが国でもふるさと納税で認められている税控除の「復興寄付金」制度のようなものを導入することです。
 もっとも特区制度は、それを運営しようとすると既存利害関係者間の対立を生み、実際には経済活動などの復興にすぐ役立てることが困難な面ももっています。しかも業種によって大きな違いがありますが、長い歴史をもった規制や保護などを受けてきた人々には、それらをないものとして原点に帰って考えることはきわめて難しいことです。
 ただ、今回の大震災は、例えば、津波に洗われてしまった農地がよい例ですが、農業を始めようとしてもすぐに手がつけられません。眞摯な農家の方々ならはじめて農業をはじめられる方々のように、この農地で生活してゆくためにはどうしたらよいかをお考えになるだろうと思います。しかも、かつてとは違って、日本の農村地帯でも少子高齢化が進み、食料需要も高級化・多様化している一方、グローバリゼーションの中で国際的には人口増による食料需要の増大とその供給構造の激変が展開しています。この状況の中で、しかもこれからも今回のような大震災に襲われる危険性のあるわが国の農業で生活して行くのにはどんな農業を進めたらよいのかを文字通り真剣に考え抜くことが必要です。
 この行方は、目先の選挙のために選挙民である農業者の当座の利益を保障しようとする人々では残念ながら見出せません。グローバル化する世界の農業の中で、素晴らしい能力をもったわが国の農民の皆さんがこれならやれるという方策を見出して行くのでなければいけません。もしこれが発見できれば、東日本大震災は、日本の農業に新しい活路を拓くことになるでしょう。私たちは、その活路を見出すために衆知を結集する時です。もっともこれは農業だけの問題ではありません。すべての産業活動について考えてみなければならないことです。



 

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