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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第48号
  2011年1月4日発行

 

 〜 プラトンの3つの種族の教訓 〜

 

財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 サブプライム・ローンの破綻で、先進国を中心に同時不況が起こった時、私はある雑誌にここで表題にしたプラトンの3つの種族のことをとりあげてエッセイを書いたことがあります。プラトンは有名な『国家』(岩波文庫で、上・下2冊になっています)という本の中で、人間を3つの種族に分けています。鉄と銅の種族(自分の欲望を充たすことだけを考えて行動する種族で、そのためのお金儲けだけに熱中する人達)と銀の種族(名誉欲が強くそのために武士のように力を尽くす人達)と金の種族(一切の欲望から離れて、ひたすら、善の達成のために働く人達)がそれです。
 プラトンの師であるアリストテレスは、社会のすべての人が金の種族にならないと立派な社会は生まれないと考えましたが、プラトンは、3つの種族とも必要で、ただ国全体、または、組織全体の運営は金の種族の人々に委ねるのではないと立派に運営できないと申しました。ところで、今日の発展した資本主義のもとでは、同じ鉄と銅の種族の中でも、すぐれた技術と多くの労役に加えて長い時間も必要とするモノづくりよりも、瞬間的にお金を動かすだけで膨大な利益をあげることができる金融業や投資家の人達が大きな力をもつようになってきました。サブプライム・ローンは正にその人達によって着想されたものでした。
 いま、世界中でその結果としての高い失業率と不況の長期化という醜悪な状態から遁れるために、金融業の規制をはじめ、一見、金の種族の立場に立ってあるべき姿に戻そうと思える動きが出てきました。しかし、残念ながら、いま世界中のどこの国でも金の種族といえる政府が活動しているとはいえません。とくに不幸なことにわが国では、ロンドン・エコノミスト誌から「指導者のいない日本」と指摘されましたように、政府がすべての利害を超越して、ただ善のみを求めて諸政策を体系的に策定しているとはとても言える状況ではありません。
 しかし、考えてみると、プラトンのように金の種族にリードされて、本当に立派な成果をあげる国になるためには、指導者だけが金の種族であるだけではうまくゆきません。その社会のすべての人々が私利私欲の追求から離れてエンジェルのように活動できるのでないといけません。それを暗黙の前提としてつくられた社会主義社会がうまく運営できなくなったのも、この条件が実現できなかったからです。もしそうなら、私たちは今こそエンジェルや金の種族ではなく鉄と銅の種族の集いでありながら、現在のように短期的な目前の利益だけに奔走する金融業者が社会をリードするのではなく、何よりも着実にモノづくりに励み、子供たちと家族、友人、隣人を愛する歓びを感じながら、科学・技術の革新をサポートし、諸問題に真剣にまたポジティブに立ち向かおうとする人間で構成される社会づくりをする工夫をしてゆかなければならなくなったのです。



 

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