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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第40号
  2010年5月1日発行

 

 〜 大学問題からみた中国・印度と日本 〜

 

財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 経済成長のためには、充実した教育を受けた労働力と研究開発力を高めるための投資とを増強することが望まれます。今、代表的な新興国といわれている中国や印度では、そのために大学などの高等研究教育機関の強化が懸命に行われています。最近、エール大学のレヴィン学長は、ニューヨーク・タイムズ紙でこのことを取り上げ、注目すべき発言をしておられます。
 この10年間に中国の大学は倍増されて2,263になり、学生数は4倍増、大学を世界トップレベルにするために必要な次のことも行っているというのがそれです。すなわち、中国では国際的なリーダーになっている研究者を集めるために、一流の研究設備を整えるだけでなく十分な基金を創設して研究者に競争的な給与と便宜とを与えるようにしようとしています。同じように印度では、この10年間に大学進学率を現在の12%から30%に高めようとしていると言われます。これは、わが国の国立大学法人が、財政不足に応じて毎年国からの運営交付金を1%強減額し、私立の40%近い大学が赤字経営になり、18歳人口激減の中で学力を問わない定員確保と大学教育の低水準化が進行していると言われているのとは全く対照的です。
 しかし、レヴィン学長は、非常に大切な次のことも指摘されています。すなわち、とは言え、中国では科学技術の創造に必要な研究教育の学際的な拡がりと、すべての領域での批判的な思考の培養ができないために、ただ物的条件を整えただけでは国際的にトップレベルの大学づくりは出来ない。その点では印度の方が可能性があるというのがそれです。日本はもちろん、この点では中国に比べると大きく恵まれています。
 しかし、同時に、レヴィン学長は、日本を含めたアジアのすべての大学に共通な欠陥として「思考力の訓練」の欠如を指摘しておられます。すなわち、ビジネスや医学や法律、政府機関や学術研究などの分野でリーダーになるためには、不断に変化する環境に対応し、新しい事実に直面して諸問題を解決する独創的な方策を見出せることが必要です。そのためには、学生諸君が情報に対して消極的な受容者になっているのでは駄目で、自分で考える力がないといけません、と。そう言われてみると、私たち日本が世界でトップレベルの大学をつくり、世界の中でその存在意義を示すことが出来る諸条件は、実に多いことが判ります。しかし、これは大学だけの問題ではありません。レヴィン学長は、大学問題だけでなくアジア諸国が考えるべき大切なことを指摘していると言えます。



 

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