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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第39号
  2010年4月1日発行

 

 〜 政策策定のこわさ 〜

 

財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 創造的破壊を資本主義発展の原動力としてとりあげた有名な経済学者J.A.シュムペーターは、かって、オーストリアの大蔵大臣にもなりましたが、政争の具となり辞任、そのあとまた銀行の総裁にもなりましたが、その銀行も破産しました。そういう苦い経験をふまえて、彼は爾来アカデミズムの世界から出ることをやめ、一切の政策提案からは縁を切ることを決意したと言われます。
 実際、政策の策定は難しい問題を抱えています。その一番大きな理由は、克服したいと考える現象を引き起こしている諸原因が数多くあり、そのウェイトづけが困難な場合が多いからです。いやそれだけではありません。現象によっては、従来多くの人達が主要な原因と考えていたものと異なった新しい原因の発見が求められていることもあります。
 私たちは、代数で、未知数と方程式の数とが等しくないと答を同時的に見出せないことを知っています。ある現象を引き起こすと考えられる原因(未知数)が多いと、その一義解を見出せるだけの数の方程式を作り上げないといけないのに、私たちはともすれば、声の大きい人やその関係のリーダー的発言者と思う人々の主張だけを重視したり、当座の人気取りだけを考えて政策提案をしたり、策定したりしがちです。しかし、こうしたやり方では、多数の原因の中で思いこみの強い原因だけをとりあげて、目的の実現を図ろうとすることになりますからその政策は失敗してしまうことになりがちです。
 シュームペーターのように、政策策定が難しいからと言ってすべての人々が政策提言や策定から離れてしまっては、現実の困った問題の解決はできません。この矛盾を少しでも軽減しながら、現実の困ったと思う現象をなくしたり、改善しようとするためには、誰もが、自分の思い込みを一度棚上げして、立場の異なった人々の言い方、原因についての主張を謙虚に理解し、自分の主張したいと思っている考えが、皆さんの色々な考え方の中で、どんな特徴をもち、限界をもっているかを自覚してみることが望まれます。
 それは、自分の主張している政策提言がどんな限界をもっているかを自覚しながら発言していることを意味します。自分の主張していることや、自分が行おうとしている政策策定を絶対的に正当と独断し、不可侵のものと思い込むほどこわいことはありません。



 

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