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理事長 新野 幸次郎 巻頭言


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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第34号
  2009年11月2日発行

 

 〜 企業永続条件の示唆すること 〜

 

財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 かつて企業は30年位しか存続しないという議論がありました。しかし、最近逆に長寿企業や永続企業の秘密に迫ろうとする研究も出てきました。サブプライム・ローンを契機にして企業存続の危機が唱えられたときだけに一層注目されているのかもしれません。
 大変興味あることに、先日も日本経済新聞社の編集委員である水野裕司さんが、200年も続いている企業数では世界の中でわが国がだんトツに多い(ちなみに、2位のドイツの1,563に対し、わが国は3,113で、フランス、英国などの300台に比べても際立って多い)という、ある研究者の実証を紹介しておられました。しかもその200年企業の業種は、酒造(447)、旅館(425)、民芸・工芸(339)、和菓子(304)、食品(291)、料理店(185)、流通・物流(183)、衣類・繊維(152)、醸造(酒類を除く)(129)などとなっているというのです。
 こうしたことの諸条件を考えてみるのは、大変興味深いことです。すなわち、山と森に恵まれて清らかな水を保障されて全国に拡がった酒造、四季をもちそれに応じて作られ、それを楽しもうとした食品・料理・和菓子、他民族による戦争支配もなく神社・仏閣・温泉めぐりなど比較的安全に旅行できたことなどから生まれた旅館業の発展など、業種別企業存続の日本的諸条件を探るのも面白い。
 しかし、企業永続の基本は何といっても企業経営者の理念と経営能力であります。かつて、『富国論』(1776年)を書き、資本主義の重商主義に対する優越性を説いたアダム・スミスは、資本主義が予定調和的に機能するためには、商人たちが顧客や競争相手の「共感」がえられるように行動しなければならないと考えていました。また、有名なマックス・ウェーバーは、資本主義が制度として存続し続けるためには、社会全体に本質的には反資本主義的なプロテスタンティズムの倫理が生きていなければならないといいました。
 そう言えば、世界全体をみてもわが国に永続企業が多く、また歴史的にはわが国より永い歴史を誇るアジア諸国の中で最初に資本主義化できた理由もわが国にスミスやウェーバーのいうような条件が定着していたからといえないことはありません。禅僧の中には、すでに戦国時代の終りに、職業倫理の高揚が仏道の中核であると主張して庶民を教化しようとした人もあり、また徳川時代にも石田梅岩のように「欲心を離れ仁の心をもって勉め、道に合って栄える」と商人の道を説いた精神が、わが国では早くから多くの人達の経済活動の重要な理念と受けとめられてきました。最近の永続企業の「家訓」の分析とか、「遠きを計るものは富み、近きを計るものは貧す」などと述べた二宮尊徳崇拝、長男の相続を止めて外部からトップを起用する方式、地域貢献やユニークな企業ガバナンスや従業員のモチベーション高揚方式の工夫などをみると、そのことがよく判ります。グローバリゼーションの中での世界的な経済倫理の凋落に臨んで日本的経営の意義が強調される一因でもあります。
 しかし、いうまでもなく、こうした企業永続の条件は、ひとり企業だけの問題ではありません。地方自治体を含めて、すべての社会組織の問題でもあります。私たちはあらためて、組織設置の目的に合致した経営理念を再検討し、全力を挙げてその経営能力の向上に努めなければなりません。



 

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