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理事長 新野 幸次郎 巻頭言


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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第21号
  2008年10月1日発行

 

 〜 消費者余剰と市民サービス 〜

 

財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 イギリスの経済学者A・マーシャルは、かつて需要者価格という言葉を創りました。ある商品またはサービスを買おうと思う需要者あるいは消費者が、それなしですますよりは、むしろそれに対して支払おうと思う価格のことを示すためです。ところで、消費者がこうして支払ってもよいと考えている価格(すなわち、需要者価格)より実際に市場で買える価格の方が安いとき、その差額分を消費者余剰と申します。安易に判りますように、人々が商品やサービスを買うのは、市場価格が需要者価格より低いか(すなわち、消費者余剰があるか)、または、ぎりぎり一致しているからです(このときは、消費者余剰はゼロになります)。
 この考え方は、行政の提供するサービスの料金についてもいくつかのことを示唆してくれます。まず第一に、需要者料金(それなしですますよりはむしろ支払おうと思っている料金)と行政が実際に提供するサービス料金とを比較して、消費者余剰があるが、または、両者がぎりぎり等しくなっていなければいけません。第二に消費者は価格だけを比較考量してモノやサービスの購入をきめているのではなく、そのサービスの質も含めてきめています。かりに質の高低に評価の力点がおかれるようなサービスの場合には、質を含めた消費者余剰が考えられて、価格は、高くても品質についての需要者価格が高いため、やはり消費者余剰があると考えられます。有名ブランド商品のケースなどはそのよい例です。
 しかし、行政サービスの場合は、この二つの消費者余剰に加えて第三のややこしい評価の仕方が入り込んでくることに注意しておかねばなりません。それは、行政サービスについての市民各層の価格および質について消費者余剰の考え方にかなり顕著な差があるということです。市場で売買されている私的な財やサービスの場合は、よく一物一価といわれるように同じものについては同じ価格がつくようになります。そして、その価格では買えない人達のことは、仕方がないことだと配慮の外におかれます。しかし、私的なサービスではなく、誰もが無差別に受けられると考えられている公共サービスの料金の場合、それが払えない人を放置しておく訳には行きません。しかも、市民の要請するサービスの質は、多様ですから、市民各層の消費者余剰を保証する料金設定というのは、複雑なものになります。
 行政サービスについては透明性と説明責任が要求されます。行政サービスに消費者余剰を見出して頂くのには、本当に色々なことを考えておかねばなりません。



 

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