トップページヘ戻る
KIURロゴ

理事長 新野 幸次郎 巻頭言

「理事長 新野 幸次郎 巻頭言」一覧へ

神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第17号
  2008年6月3日発行

 

 〜 仁恕の国への他国制度の導入 〜

 

財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 米国では競争の結果生れる経済的格差や更にそれから生れる社会的格差さえも、個人の能力差によるもので仕方がないと受けとめられてきました。ところが、欧州各国では、各人の能力差で報酬などの経済的な差が生れることは認めながらも、それは自分だけの責任ではなく、社会システムに帰すべき点もあると考えられてきました。
 この違いは、国の成立過程の違いからも説明できます。米国は周知のように最初は英国から、次には欧州各国から脱出し、歴史的制度も何もない新天地に移民してきた人たちが創り出した国です。頼ることが出来るのは、各人の能力だけでした。それもあって、何をするにも機会の平等、それを保証する法的・政治的平等が大切だと考えられてきました。ところが欧州各国では、能力差で結果の違いが生れることは認めつつも現在の自分たちの能力や社会的地位は永い歴史的な制度的遺制の結果でもあると考えられてきました。この差が、米国と欧州各国での諸々の社会的差別化、色々なハンディキャップを抱えた人々への対応の違いを生み出してきたといえます。
 その点、わが国は永い歴史的遺制をもった国という点では欧州に似ていますが、キリスト教やイスラム教のような一神教が支配し、それぞれの原理主義的考え方が生きている欧州とも違っています。わが国はどちらかというと汎神論的です。それもあって、宗教ではなく、キリストと同じ時期に生き活躍した孔子の「論語」が多くの人の生活のよりどころにされてきた国です。今日、わが国で「論語」がどれほど万人の生活のよりどころになっているかは判りません。しかし、各界のリーダーの中に「論語」の仁とか恕とかがこの社会で一番大切な気がまえだと語る人が多いことも事実です。ところで、この二つの言葉は何れも、礼にもとづいた自己規制と思いやりの心を現わすものだと解釈されています。この社会では思いやりに欠けた言説や政策は即座に反発されることになります。後期高齢者などという言葉への反発もそれを象徴しています。とはいえわが国でも、いま世界の多くの国々のように、競争の結果、能力の差によって優劣がきまることを認めながらも、米国とはもちろん、
欧州諸国とも違った独自の仁恕の生かされた制度づくりが望まれています。私たちはどこかの国の眞似ではなく、他の国々がそれぞれ目標にしたいと思うような新しいわが国独自の制度を創り出して行かねばなりません。



 

6510083 神戸市中央区浜辺通5丁目114
神戸商工貿易センタービル18

TEL 078(252)0984

FAX 078(252)0877

KIURバナー
トップページヘ戻る