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理事長 新野 幸次郎 巻頭言

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神戸都市問題研究所メールマガジン「マンスリーレポート」 第15号
  2008年4月1日発行

 

 〜 上海市における「社区」への期待 〜

 

財団法人神戸都市問題研究所 理事長 新野 幸次郎

 
 どこの国でも最近社会・経済構造は急激に変化しているが、中国はその象徴であると言ってよい。都市人口の急激な増大のなかで、高齢化・核家族化が進み、伝統的な大家族機能は喪失。生活水準の上昇に伴なう社会的ニーズや住民のライフスタイルの多様化に対応できない地域サービスの欠如感の増大。学校・病院までかかえていた国営企業の市場経済化による従来の社会主義的福祉体制の崩壊。こうした変化の中での人間関係の希薄化と犯罪の激増。これらは、すべて中国の大都市行政と市民が抱えている緊急の課題であるといわれる。おまけに、経済成長と共に顕在化した所得格差の拡大と中国特有の都市戸籍と農村戸籍とによる社会福祉の格差もあって、中国の課題は益々拡大している。
 この中でいまその重要性が認識され、意欲的に取り組まれているのが、「社区」である。この「社区」という概念は1930年代の国民党政府時代に「コミュニティー」を意味する中国語の訳語として用いられるようになったといわれ、「一定の地域に居住する人々の生活共同体」のこととされる。この社区は、1949年の共産党政権確立以降も社会構成員の生活を保証する組織として重視されてきたが、いわゆる「改革開放」以降は、「都市住民の社会的サービスを充足させ、人々の生活の質を向上させる」ものとして格段の役割を担うものになってきた。
 この先駆的な役割を中国全土の中でも果たしたのが、上海市である。社区では、(1)高齢者・障害者向けや児童向けなどの無償サービスに加えて、(2)各種慰問や法律相談などの公益事業が廉価に提供されるほか、さらに(3)家政婦の派遣や託児サービスなど有償サービスが行なわれることになっている。これは明らかに、行政の観点からの地域管理と住民の自主性発揮とを結合させ、市場経済化に伴なう社会福祉の欠落を補う役割を担おうとするものであるといってよい。
 わが国でも、高齢社会化の進展の中で、財政赤字克服のために年金制度や高齢者医療制度をはじめ大幅な社会福祉体制の変革が進められようとしている。大震災を契機に、自助・共助・公助のあり方について抜本的な意識改革が生まれることになったわが国でも、この上海市を先駆とする中国「社区」の建設の歩みはきわめて重要な示唆を与えている。



 

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